全国脊髄損傷者連合会 北島さまにインタビューしました!
- 亮介 上原
- 7月31日
- 読了時間: 5分
全国脊髄損傷者連合会*1 神奈川県支部川崎協会の副会長であり、神奈川県川崎市で「特定非営利活動法人ウィンドウ」理事長としても活動されている北島総美(さとみ)さんにお話を伺いました。
「手作り工房ウィンドウ」立ち上げの経緯
上原:「北島さんのご経歴や、現在の活動内容を教えてください。」
北島さん:
「1982年に交通事故で頚椎を損傷し、車椅子生活になりました。病院で2年ほどリハビリした後、生活介護のデイサービスに通っていましたが、『自分が思うような生産活動ができない』という歯がゆさを感じ、より主体的に働ける場を自ら創りたいと考え、「特定非営利活動法人ウィンドウ」を設立しました。後に「地域活動支援センター手作り工房ウィンドウ」を立ち上げ、現在は利用者様とともに、バッグや小物などの布製品を製作・販売しています。
デイサービスでは、職員が整えてくれた環境で与えられたことをやっていましたが、ウィンドウでは材料の買付から販売先探しまで自分たちでやらなければならず、大変でしたが達成感もありました。
いろんな障害の方がいらっしゃるので、それぞれが製作できるパートをやってもらっています。製品はイベントやお祭りに出店して販売しています。
ヘルパー不足で縫製を担当できる人を募集していますが、なかなか人が集まらないのが現状の課題です。」
「自分たちが作ったものが売れ、その工賃が利用者に支払われること」が何よりの喜びだと語る北島さん。利用者の収入向上に貢献することで、当事者としても、また事業所としても大きな達成感を感じられると言います。


全脊連の活動と課題
上原:「全国脊髄損傷者連合会(以下、全脊連)について教えてください。」
北島さん:
「全脊連では、ピアサポート*2をメインに活動しています。人とのつながりがあった方が、震災のときに安否確認してもらえるなど良い面もあります。
また、受傷したばかりの人に話を聞くケアカウンセリングも行っています。私自身もそうでしたが、中途障害*3でいきなり障害を持つと、何もわかりません。(自身が)病院にかかったときに、脊髄損傷、頸髄損傷の方がいればベッドまで挨拶に伺います。」
「全脊連の川崎協会では、若い方たちの入会が少なく高齢化が進んでいます。外に出て動ける人も少ないので、名前がわかっていても会ったことのない人も多くいます。
年に1回、川崎協会主催で3Dプリンターや成年後見制度などの研修会を主催していますが、もっと人が集まれる機会があると良いと思っています。」
当事者としての要望
上原:「脊髄損傷者の生活全般に関する課題や、ご要望はありますか。」
北島さん:
「私の周りでは褥瘡*4に悩んでいる人が多くいます。専門の病院でもなかなか理解してもらえず、安心して入れる病院が必要だと感じています。」
上原:「福祉・医療・交通などの社会制度において、特に改善してほしいポイントはなんですか。」
北島さん:
「年に一回、市に要望を出す福祉大会があるのですが、ミライロID*5をバスで利用したところ、運転手に知識がなくトラブルになったケースを踏まえ、このサービスについて周知してほしいと要望を出しました。」
上原:「就労支援制度に関して、改善してほしい点はありますか。」
北島さん:
「移動支援から2時間開けないと通所支援が使えず、要望を上げても認められませんでした。本当に私達当事者のことを考えてくれているのか、と疑問に思うことがあります。また、ジョブコーチ*6制度がもっと浸透してほしいです。」
「相談支援センターなどを通して見学に来ても、入所に繋がらないことが多くあります。養護学校の先生も見学に来ますが、あまり生徒さんたちと繋がることはありません。もっと利用者と私達をつなぐコーディネーターのような機関があれば良いと思っています。」
上原:「最後に、北島さんにとって働くとはなんですか。」
北島さん:
「働くことは生活のリズムを整え、健康を維持することにつながっています。ウィンドウでの活動は忙しいけれど楽しく、自分の生きがいになっています。」
上原:「本日は貴重なお話をありがとうございました。」

■ 編集後記
今回の取材から、当事者の強い働く意欲と社会貢献への思い、適切な働き方の場を増やす必要性、そして情報とサービスを結ぶ動線整備の重要性を痛感しました。また、私たちエンパワークファクトリーも、多様な働き方の一つとして当事者の有用な選択肢になれるよう運営していく重要性を改めて感じています。北島さんは工房運営と副会長活動を通じ、地域の支援ネットワークの充実を目指しています。今後の展開が期待されます。
注釈
*1 全国脊髄損傷者連合会
脊髄損傷を持つ方々とそのご家族を支援する公益社団法人。ピアサポートや研修・セミナー、啓蒙活動を通じて、障害理解の促進と当事者支援の拡充を図っている。
*2 ピアサポート
同じような立場や経験を持つ人(=ピア:peer)が、仲間として支え合う支援のこと。医療や福祉の現場では、当事者同士が互いに共感し合いながら、心理的・社会的な支援を行う重要な仕組み。
*3 中途障害
生まれた時からある先天性の障害と異なり、病気や事故等の事態によって生じた障害。
*4 褥瘡
寝たきりなどによって、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまうこと。一般的に「床ずれ」ともいわれる。
*5 ミライロID
デジタル障害者手帳のスマホ用アプリ
*6 職場適応援助者(ジョブコーチ)
障害のある人が職場で安心して働き続けられるように、職場での支援や職場環境の調整などを行う専門職。障害者本人と企業の双方を支援し、働きやすい職場づくりをサポートする。
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